森田のワンポイント・コラム Vol.22
~職場のハラスメント対策の義務、臨検(労働基準監督署による実態調査)開始~
新型コロナウィルス感染症の緊急事態宣言とまん延防止等特別措置が9月30日で一斉に解除されることになりました。
もちろん、私もポジティブに捉えたいのですが「新規感染者数が短期間で激減した理由が良く分からない」という厚労大臣や専門家のコメントが残念でなりません。
ワクチン2回接種の最大の効果は、新型コロナに感染した際に症状が軽減される、です。
デルタ株拡大により集団免疫を獲得するには80%以上の国民が抗体を持つことと専門家は公表しています。
現在、ワクチン接種2回目完了は52%ほど、既に感染した者を加えてもこの数字は大きく変わることはありません。
ということは…新規感染者数そのものは大きく減少していないが、その大半が軽症あるいは無症状であることから、保健所や医療機関に連絡をすることが無い=保健所や医療機関によるPCR検査の実施対象者数が激減している、という状況により、政府がカウントする新規感染者数が激減したということなのです。
この事実を国民に正しく伝えることは、段階的な制限の解除=段階的な経済活動の再開、を正しく受け止めて貰うために重要だと思うのですが…これにより『ワクチン2回接種+PCR陰性証明』の効果も増すことと思うのですが…みなさんはどのように考えますか?
さて、今月と来月のテーマは臨検対策です。
臨検とは労働基準監督署による監査(調査・指導)のことです。
臨検の目的やテーマには様々ありますが、今月は昨年法改正された『労働施策総合推進法』=職場のハラスメント対策に関する臨検についてお話をします。
そもそも『労働施策総合推進法』って聞いたことはありますか?
あまり馴染みの無い法律だと感じませんか?
何を定めているか、簡単に云うと『働き方改革』の推進に必要な労働施策について定めています。
1.労働時間の短縮等の労働環境の整備
2.雇用形態又は就業形態の異なる労働者の間の均衡のとれた待遇の確保、多様な就業形態の普及及び雇用・就業形態の改善
3.多様な人材の活躍促進
4.育児・介護又は治療と仕事の両立支援
5.人的資本の質の向上と職業能力評価の充実
6.転職・再就職支援、職業紹介等に関する施策の充実
7.働き方改革の円滑な実施に向けた取組
上記の7つの労働施策、1.の中に『職場のハラスメント対策及び多様性を受け入れる環境整備』という基本的事項が示されているのです。
2020年6月1日、職場のハラスメント対策において、事業主と労働者の責務が法律上明確化されました。
そして、その責務を果たすための義務が課されました。
1.事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発(就業規則、関連規程)
2.相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備(社内外相談窓口の設置、相談担当者の対応力開発)
3.職場におけるパワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメントに係わる事後の迅速かつ適切な対応(事実関係の正確な確認、被害者に対する適正な配慮、行為者・加害者に対する適正な措置、再発防止の措置を講ずる)
4.そのほか併せて講ずべき措置(相談者や行為者等のプライバシー保護、不利益取扱の禁止、について定め、周知・啓発する)
現行法では罰金刑や禁錮刑が定められていませんが、実態調査の結果によっては刑罰の対象とすることを検討しています。
そこで、法改正から1年半ほど経過する今年の11月・12月に臨検を実施することが計画・準備されているのです。
前述の義務が果たされているかが調査内容です。
もしも、自社の対応実態に不安があれば、ぜひ、SCT1%CLUB事務局までご連絡下さい。
労基署対策に強いコンシェルジュがお話を聴き、対応をサポートさせて頂きます。
参考までに物流業界は調査対象に選ばれやすいのです。
その理由は、厚労省は精神障害による労働災害請求件数というデータを毎年公表しており、労災請求が多い業界を対象に指導を行っています。
その2020年度データにおいて、ワースト3位なのが貨物運送業なのです。
精神障害(=メンタルヘルス不調)と職場のハラスメントとはどのような関係があるの?と感じる方もいらっしゃいますよね。
実は職場のメンタルヘルス不調の原因のダントツ1位が職場のパワーハラスメント、2位がセクシャルハラスメント、なのです。
つまり、貨物運送業では職場にパワハラやセクハラの問題が山積しており、それを原因に精神障害の労災請求件数が多い、と労働監督行政機関が認識しているのです。
職場のハラスメント対策は離職原因でもあります。
正しく取り組みをしていることをホームページやSNSで発信することは採用にもプラスの影響をもたらします。
臨検で是正勧告を受けてから取り組むのではなく、ポストコロナの組織力&営業力強化を目的に取り組みをしましょう。
今月はここまで、来月は臨検対策シリーズ第2弾として遡及支払(割増賃金等の未払い)の臨検について、お届けします。
それでは、また。