社労士の労務管理アドバイス Vol.20
こんにちは。社会保険労務士の伊藤治雄です。
今月も、実際に相談を受けた労務トラブルの事例をもとに皆さんの会社がよりレベルアップしていくためのヒントをお伝えします。
【今回のテーマ】
「新型コロナウイルス 社内で感染者や濃厚接触者が出てしまった場合の対応」
【相談内容】
会社で体調がすぐれないものがPCR検査を行ったところ、陽性反応が出た。
本人および、共に働いていた濃厚接触者と認定された3名についてどう対応すれば良いのか?
【アドバイス】
新型コロナウイルス感染症を抑え込めていない現状では、いつ社内の人が感染者、あるいは濃厚接触者になってもおかしくありません。
社内で感染者や濃厚接触者が出た場合に、迅速に対応するためには、対処法をあらかじめ把握しておくことが重要です。
基本的な対応は下記の通りです。自社の状況に応じ参考にして下さい。
1.感染者本人への対応
医師や保健所の判断に従い、感染リスクがなくなるまで感染者である社員に出勤停止や休業の指示を出します。
新型コロナウイルス感染による休業の場合は、会社都合による休業には該当しないので、社員に対して休業手当を支払う必要はない、とされています。
傷病手当金(健康保険)の対象となるので、申請すると本人は、国から給料の3分の2相当を受け取ることができます。
2.社員に濃厚接触者が出た場合
濃厚接触者とみなされるのは、感染者の発症2日前から接触した場合です。
具体的な定義は以下のような場合になります。
・感染者と同居あるいは長時間の接触があった人
・感染者の気道分泌物もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性がある人
・手で触れることのできる距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策無しで、患者(確定例)と15分以上の接触があった人
出勤について、保健所の指示は「強制はできませんが出勤されないほうがよいですよ」という言い方になるようです。
その場合会社としては「保健所の指導に従ってください」と言うことになると思いますが、14日間の出社停止期間を設けている会社も増えています。
具体的な対応は、下記の中から選択する事になります。
A)社員が無症状であれば、在宅ワークが出来れば在宅ワークをさせて構いません。
その際には、普通に賃金を払うことになります。
B)在宅ワークが出来ない場合は、「会社が休業指示」をしたことになるので、休業手当の支給が必要です。休業手当金額は法的には平均賃金の6割以上が必要です。
もし、社員が年次有給休暇を取得したいと言った場合はそれを優先させてあげても構いません。
C)社員の体調が悪い場合は、3日間は休業手当金の支給をしてあげたほうが良いでしょう。
もちろん、社員が年次有給休暇を取得したいと言った場合はそれを優先させてかまいません。
4日目からは傷病手当金の支給になります。
また、濃厚接触者から病院で診断を受けた際のPCR検査費用などの会社負担についても、質問されることが多いです。
業務に関して濃厚接触となったのであれば、本人に費用を負担させるのは、納得感なく、会社が検査を強制するのであれば会社負担が妥当です。