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社労士の労務管理アドバイス Vol.9

こんにちは。社会保険労務士の井下英誉です。
今月は私から労務管理に役立つ情報をお伝えします。

既に梅雨の大雨で甚大な被害が出ています(被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます)が、最近では毎年のように台風による被害も出てい
て、大きな経営リスクにもなっています。
そこで今回は、コロナ禍でも話題になった「休業手当」を台風被害においてはどのように考えれば良いのか、ケース別で紹介していきます。

1.台風接近時に出社させてもよい?
台風接近時の出社命令の可否について定めた法律はないため、会社の判断になります。
一方で、会社は労働者に対して安全配慮義務という責任を負っていますので無理な出勤を強いて被害を受けた場合、安全配慮義務違反でその責任(損害
賠償責任)を問われることがあります。

2.そもそも休業手当はどのような場合に支払いが必要なのか?
休業手当については、労働基準法で、「使用者の責に帰すべき事由により休業させる場合は、休業手当(平均賃金の6割以上)を支払わなければな
らないと定められています。
ただし、天災地変などの不可抗力で下記いずれにも該当する場合は、その義務はないとされています。

【不可抗力と判断される事由】
①その原因が事業の外部より発生した事故であること
②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

3.労働者の安全のために休ませる場合は?
安全配慮義務の観点から、労働者を休業させる判断をした場合は、【不可抗力事由】に該当しないため、休業手当の支払いが必要になります。
一方、コロナ禍で定着しつつある在宅勤務を命じることは「勤務」になりますので、通常の賃金を支払う必要があります。

4.職場に直接的な被害があり休ませる場合は?
台風により事業施設や設備が直接的な被害を受け、一時的にでも営業を継続することが困難になった場合は、【不可効力事由】に該当すると考えられる
ため、休業手当の支払いが必要ないケースがほとんどです。

5.台風被害の影響で仕入れができなくなり労働者を休ませる場合は?

事業施設や設備は直接的な被害を受けていないものの、取引先の被害や道路等の被害により営業を継続することが困難となった場合は、一見不可抗力のように思えますが、取引先への依存度、他の代替手段の可能性、休業回避の努力など使用者としての責任を尽くしたか(尽くしてきたか)により判断されます。
判断の結果、【不可抗力事由】に該当していれば休業手当の支払いは必要なありません。

いかがでしたか?
休業手当については、経営者にとって厳しいと思える判断も少なくありません。

でも、コロナにより労働者の安全・健康意識が高まった状況下では、安全第一の視点で判断することが今まで以上に重要になったと言えそうです。

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