森田のワンポイント・コラム Vol.3
今月も緊急かつ重要な情報提供から。お手元に会社組織図と賃金規程をご用意頂きお読み下さい。
1月10日に労働基準法の一部を改正する法律案要綱が厚生労働省の労働政策審議会で諮問され「おおむね妥当」という結果に至りました。
法改正において審議会の諮問で「おおむね妥当」となれば閣議決定されることは間違えなく、今月20日からの2020年通常国会会期において法案が可決されることになります。
この法改正案、一体、どのような内容なのか、みなさんはご存知でしょうか?
要旨は3点あります。
1つ目は「労働者名簿」「賃金台帳」「雇用契約、解雇、災害補償、賃金、その他労働関係に関する重要な書類」の保存期間が5年間となります。
ここに出て来る様々な書類等で作成していないものがあるのは現時点で論外となりますから、SCT1%CLUBの会員特典にある労務相談を利用して書類等に不備や漏れが無いように整備しましょう。
2つ目と3つ目は「付加金」に関するものです具体的に言うと「未払金」の請求に関する大幅改正です。
現在、労働者は会社に対して過去2年に遡って「未払金」の請求をすることができます。
これが、過去5年に遡って請求可能(経過措置として当面は3年)となります。
「未払金」で最も多いのは「割増賃金」です。
特に『管理職へは割増賃金を支給していない』という会社が問題を発生させています。
その理由は労働法で定める管理監督者と個社で定める管理職・監督職が同じ定義になっていないためです。
労働法で定める管理監督者には満たさなければならない5つの要素があります。
①経営計画や事業計画へ参画する権利を有する
②決裁権を有する
③人事権を有する
④出退勤の定めが無い
⑤役員や理事などの経営幹部と遜色のない報酬を得ている
の5つです。この5つの要素を満たしている者であれば割増賃金を支払わなくても良いとなっています。
しかし、中小零細企業の多くは④⑤の要素を満たしていないにも関わらず割増賃金を支給していないケースが多く見られます。
このようなケースで管理職から未払金を請求されたならば、5年間遡った金額を支払わなければならなくなります。
もちろん、現金で、大抵一括で。これが、2020年4月1日に改正施行されるのです。
不安を覚えたならば3月末日までに対応策を整えて労働者側と協議を行うことをお勧めします。
そして、ご要望であればSCT1%CLUBのコンシェルジュがご支援します。
この法改正により倒産する会社も出て来るでしょうね。
倒産と言えば、奇しくも、本件と同日に東京商工リサーチが発表したニュースに
『深刻!運送業の人手不足倒産率は他業種の3倍』
とうものがありました。
2019年に倒産した運送業は196件(前年比7.6%増)、そのうち人手不足を理由としたものが31件(前年比47.6%増)で約16%を占めています。
2013年に調査開始以来最多とのことで全業種の人手不足倒産の割合約5%と比較すると約3倍、極めて高い割合となっています。表現に問題はあるかも知れませんが、物流業界は超売手市場です。
未払金があるような会社には見切りをつけて、転職を考える管理職世代(30代半ば~40代半ば)は、たくさんいると思います。
もちろん、退職時には未払金の清算を求めるでしょうね。
未払金はひとり清算すると清算請求の連鎖を生むケースも多く、法律の専門家に相談しながら対応をすることが必須とお考え下さい。
ここまでがトピックスでした。
さて、ここからは私のコーナー、主に働き方改革の推進に関する情報の3回目です。
今号では『従業員たちが自ら進んで働き方を変えるように導く方法』について、取組事例を3つお伝えしようと思います。
働き方改革の主役は従業員であることは何度もお伝えして参りました。
そして、先月は従業員たちには働き方改革の手本見本が必要であり、まずは、経営者自らが働き方を改革することが求められるというお話でした。
その上で、従業員が主体的に積極的に働き方を変えるために有効な取組事例をご紹介します。
1)人生設計をさせること
大袈裟なもので無くて結構なので『人生設計書』を作成して、それを会社内で共有し、エールを贈り合うことにより、自分の夢や目標、置かれている立場を再確認して、仲間の応援も得ながら生きて行こう!というスイッチが入ります。
仕事が人生のすべて、という人も中にはいますが仕事は人生における夢や目標を叶えるために重要な要素のひとつであり、仕事だけ、という人はストレスを抱えやすく、また、転職を繰り返すような悪癖をもってしまいがちなのです。
2)働き方設計をさせること
最近の若者たちや学校では働き方設計のことをキャリアデザインやキャリアプランと表現することが多いです。
これは、1)の人生設計を実現するためにどのように働くかを具体的にした内容になります。
人生設計と同じように会社内で共有しエールを贈り合うようにします。
1)と2)において留意すべきことは多様性=ダイバーシティです。経営者の多くは昭和から社会人として活躍して来られたと思います。
従って、例えば、1)において『結婚することは幸せでしょ!』『稼いで良い車を持ちたいと思わないの?』、
2)において『偉くなりたいと思わないの?』『稼ぎたいと思わないの?』のような事を当たり前、もしくは、一般的のように考えているかも知れませんが、平成以降の若者たちにとっては当たり前でも一般的でもないことです。
ですから、2)に『5年後に転職』などと明記するような若手もいると思います。
しかし、感情的にならずに『なるほど、そういう考えの人もいるんだな』と受け止めて下さい。
そして、5年後に転職を考えている人だと分かったことで、その人に対して管理職教育などをする必要がなくなったと割り切って労務管理に努めて欲しいと思います。
3)数字を共有する
サラリーマンの多くは数字に対する意識や自覚は低く、自分のこと以外は興味関心が無い傾向にあります。
経営計画や経営目標を数値として共有し、それを達成しないと自分達の報酬にマイナスの影響が出ることを理解させることが重要です。
今までは残業し放題で残業で稼ぐことが当たり前だった、という乗務員がいますが、働き方改革関連法施行の以前から残業で稼ぐことは当たり前という考え方は間違っており、『稼ぐことができる人=会社に利益を齎す人、ただし、コンプライアンスを満たすことが前提で』という正しい価値観を共有することが必要です。
時間外労働時間を削減した、結果、売上利益が落ちた、という負のスパイラルに陥らないためにも会社の目標を達成するために与えられた条件下で自分には何ができるか?仲間と協力をして何を始めるか?すべては数字を共有し正しい社会人の在り方を自覚させ、責任感を高めることから始まります。
進め方が分からない、という会員は遠慮なく相談のメールを下さい。
私及びコンシェルジュが責任をもって対応致します。
それでは、次号の2月号もお楽しみに。