社労士の労務管理アドバイス Vol.24
こんにちは。社会保険労務士の伊藤治雄です。
今月も、実際に相談を受けた労務トラブルの事例をもとに、皆さんの会社がよりレベルアップしていくためのヒントをお伝えします。
【今回のテーマ】
「契約社員を契約期間中に解雇したいの場合の対応」
【相談内容】
契約社員として雇用したAさん、要領が悪く、作業のコツを掴むのに時間がかかりすぎ、なかなか一人で任せられない。
遅刻も多く、同じ事を何度説明してもミスを繰り返し、これ以上指導するのも大変だ。これでは雇用した意味がない。
まだ契約が6ヶ月残っているが、何とか辞めてもらう事はできないか?
【アドバイス】
契約社員のように期間の定めがある雇用契約(有期雇用)の場合、解雇を検討する場合に、知っておかなくてはならない重要なことがあります。
それは、雇用契約の期間の途中での解雇はよほどのことがない限り違法とされているという事です。
会社都合の解雇は厳しく禁じられており、労働者を解雇するためには「やむを得ない事由」を明らかにすることが必要です。
最終的に会社都合の解雇が正当かどうかは、裁判所で判断されますが、この「やむを得ない事由」があるとして、期間途中の解雇を認めた判例はほとんどありません。
天災事変や経済的事情により事業の継続が困難になった、背信的な無断欠勤を続けたなど、懲戒解雇に値するような極端なケースに限定されています。
今回のような、能力不足の解雇や協調性欠如を理由とした期間途中の解雇は適法と認は認められないのです。
期間途中の解雇が原則として禁止されているのは、契約社員は正社員と異なり、契約で決めた期間は会社として雇用することを約束しているから、それを破ることは許されないという考え方によるものです。
基本的な対応は下記の通りです。自社の状況に応じ参考にして下さい。
1.最初から1年などといった長い契約期間を設定しない。
当初は、より短めの契約期間を設定することが合理的です。
例えば3ヶ月ぐらいから始め、本人の人柄や能力、勤務態度が明らかになっていくのに従って、6ヶ月、1年と伸ばしていく事がリスク回避に繋がります。
契約を更新する際には、目標や期待している事を明確に伝え、どれぐらいのレベルに到達しているのかをフィードバックする事で、本人のレベルアップも期待でき、また期待しているレベルに達していない場合は、契約更新を拒む理由にもなります。
2.本人と対話を持つ
期間途中の解雇は、法的には認められる可能性が低いため、契約満了を待たざる得ません。
しかしながら、単に時を待つよりは、会社として可能な対策は施しておきたいものです。
進め方としては、本人が、会社に対して思っていることを述べてもらい、会社からも本人に対してどう評価しているのか、事実に基づき伝えます。
今後、本人に期待していることを具体的に示し、改善されない場合は次回の契約更新がない旨説明します。
居心地が悪くなると感じる契約社員は、自分から辞めると言ってくるケースもあり、逆に気持ちを入れ替え、やる気になって活躍してくれるケースもあります。
法的なアプローチではありませんが、辞めさせる前提ではなく、本人に誠意を持って対話を持つことで有効に機能することが期待できます。